変なビジネス用語
今日、朝日新聞のニュース記事で「ほぼほぼ」という表現が市民権を得てきたみたいな話があり、はてぶのホットエントリに上がっていた。
www.asahi.com
これはべつにビジネス用語として紹介されているわけではないんだけど、ビジネスマンがよく使ってるというイメージがある。就職するまでこんな言葉聞いたことなかったし、テレビでも耳にしないので、私のなかでは「変なビジネス用語」の一つとして認識されている。
ちなみに私自身は「ほぼほぼ」という表現は全く使わない。べつに意図的に避けているわけではないんだけど、自分の口から出てくることは絶対ないなという感じ。「ほぼほぼ」と言っている人に文句をいいたいわけではないものの、どうしても気持ち悪いという感覚があって、どんだけ耳にしても自分の口から出ることはないなと。
こういう、「ビジネスマンが使うヘンな言葉」ネタはたびたび盛り上がっていて、たとえば以前はこんな記事↓を読んだ。ビジネスマンがムダに横文字を使おうとして変になっているという話だ。
http://matome.naver.jp/odai/2142173791626860501matome.naver.jp
似たような記事はいくつか見たことがあって、例えばほぼ日に載っていたこの記事↓なんかは、とてもおもしろく、かつ「これらの表現はネタとして扱われるべき変な日本語である」という判断にとても共感できる。かなりオススメな連載です*1
なるはやで、紙に落とし込んでいこうではありませんか。
いったんペンディングしたものを、
仮にフィックスして、うしろの時間を見ながら、
アバウトに丸投げしていこうではありませんか。
さて、ほぼ日の記事に載ってるものが多いのだが、私自身が仕事上よく耳にするものの自分では絶対に使わないビジネス用語について、以下にメモしておく。
「チャリンチャリン」
何か具体的なサービスや事業のビジネスモデルの話をしているときに、手数料・利用料などの収入のことを「チャリンチャリン」という人がけっこういる。賽銭箱にお金が放り込まれるようなイメージなんだろうか。
不思議なことに、作業委託費の収入とか製品の販売収入とかは、チャリンチャリンとは言わない。
なんというか、「いったん仕組みを作ってしまうと、ほっといても自然にお金が流れてくる」的なビジネスモデルの場合に*2、「チャリンチャリン」という言葉が使われるようだ。何かを1回利用するごとにお金の支払いが発生する様子が、「チャリン」という音で表現されているのだろう。
たとえば、ECモール事業で出店者からモール運営者に入るシステム利用料みたいなのは、「チャリンチャリン」と呼ぶことが可能。そういう事業のことを「チャリンチャリンビジネス」と呼ぶ人もいる。
「お願いベース」
「お願いベース」は、人や企業に何かを頼む時に、へりくだった感じを強める目的で用いられる。頼みごとの際の「申し訳なさ」や、「無理だったら別にいいです」感を強調する表現だと言えば分かりやすいだろうか。
「本当はこんなことをお願いできる義理ではないのだが、ここは一つ、なんとかお願いしたい。しかしまぁ、本来無理なお願いであることは承知しているので、ダメならだめで諦めるつもりですが」というニュアンスを表現する際に、「お願いベース」が用いられる。
「これはもうほんとに、お願いベースなんですけど、できれば来月までに◯◯をして頂けますと弊社としては大変助かるところでして・・・」みたいな。ベースって何なんだよ。
ベースって何だよ感は「正直ベース」(頻出)にも言えることです。
「おいくら万円」
「幾ら」の意味。だいぶ変な日本語だけど、ビジネスマンの間ではごくふつうに使われている。
見積もり依頼するときに、「いったんこの部分の要件をこちらで決めてしまえば、開発費がだいたいおいくら万円というのはすぐに出していただけるんですかね?」みたいな。
万単位ではなく億単位になりそうな場合でも、「おいくら億円」とは言わず「おいくら万円」が用いられる。
「いまいま(のところは)」
これは「ほぼほぼ」と同じ繰り返し系ビジネス用語で、単に「今のところは」の「今」を繰り返したもの。
「このオプションサービスは、いまいまのところは無償提供でも構わないが、いずれ利用料を取るようにして、チャリンチャリンビジネスとして育てていくべきだ」みたいな。
「今のところは」という表現は、「将来は状況が変わるかもしれないけど、現在のことに限定していうと」というニュアンスを持っているわけだが、これが「いまいまのところは」になると、たぶんその「限定」感が強められるのだろう。つまり「ぶっちゃけ来月にはどうなってるかホントわからないんだけど、少なくとも今はそう言える。今はね」みたいな状況で、「いまいまのところは」が用いられるわけである。
「のところは」に繋げず「いまいまの状況をお伝えしますと…」みたいな使い方もある。
「込み込み」
これも繰り返し系のビジネス用語の一つ。たいていは、金額に何かが含まれていることを言う時に用いられる。
「保守料と回線費用も込み込みで、月額◯万円になります」みたいな。「込み」でええやんと思うけど……。「全部含めて」感を強めたいのだろうか。
「共有」=「連携」=「展開」
情報とか資料をあげる/もらうことを、ビジネスマンは「連携」と言ったり「共有」と言ったり「展開」と言ったりする。
「共有」はまぁ自然だと思うけど、「連携」とか「展開」とか言いたがる人もけっこういて、変な日本語だなぁといつも違和感を覚える。
「それでは貴社内の方針が固まりましたら、我々にも連携いただけますと・・・」
「先日◯◯様よりご提示頂いた資料を、関係者の皆様に展開いたします」(と言ってメールに何か添付されてばらまかれる)
みたいな。IT企業の人がよく使っているイメージがある。
「〜いただきたく。」
ビジネス用語というわけではないかもしれないけど、メールとかで何かをお願いするときに語尾を「〜いただきたく。」で止める人いるよね。「◯月末までにはご決定いただきたく。」みたいな。
かなり上から目線で強要してるように感じられるので、私は絶対そういう表現は使わないんだけど、人によってはメールで何かを依頼する時に常に「いただきたく」止めをしている。
まぁ発注者が受注者に対して使う分にはいいかも知れないけど、逆の立場で使っちゃってる人もいるから驚く。しかもそういう人は、「いただきたく」止めを、デキるビジネスマンの表現だと勘違いしてる節があったりもする。
「仁義を切る」
これは本当におかしい。ビジネスマン(役人の人もよく使うが)が「仁義を切る」という時、その意味は「隠し事になってしまわないように、事前に知らせておく」という意味だ。
たとえば、あるプロジェクトをA社との間で進めていたところ、じつは並行してB社との間にも似たようなプロジェクトが生まれることになったとする。A社が「自分たちだけがやっている」と思い込んでいるまま、B社とのプロジェクトのほうが先に世に出てしまったりすると、A社としては浮気されたような気になってヘソを曲げてしまいかねない。だからそういう場合は、B社とのプロジェクトが本格化する前に、「A社に仁義を切っておく」のだ。
しかし本来「仁義を切る」というのは、ヤクザの世界における「初対面の挨拶」のことだ。Wikipediaにも詳しく載っている(リンク)が、「お控えなすって」とかで始まる定型的な挨拶の仕方があるわけ。そういえば昔YouTubeで見たことがあるんだけど(今は消されてる。ここにテキストが載ってた。)、中国地方のヤクザに密着取材したテレビ番組があって、親分が「最近の若い者は、仁義の切り方も知らない」と嘆いて、子分に対して仁義の切り方を実演しながら指導していた。腰を低くして、片手を差し出して手のひらを見せるようにし、ドスのきいた声で「お控えなすってぇ!」とやっている姿は、けっこう迫力あってかっこよかったな。
方言によって変わるみたいだが、
ヤクザ1「お控えなすってぇ」
ヤクザ2「お控えなすってぇ」
ヤクザ1「お控えなすってぇ」
ヤクザ2「お控えなすってぇ」
ヤクザ1「それじゃぁご挨拶になりません、まずあんさんからお控えなすってぇ」
ヤクザ2「……」
ヤクザ1「早速のお控え、ありがとうござんす」
みたいな感じで、相手に控えてもらった上で、自分から先に自己紹介を切り出すのだ。ググると色々なバージョンが出てくるけど、日本語としてもリズム感があって美しい。
それが「仁義を切る」ということなのに、会社で部長とかが「A社には俺が仁義切っとくから安心して」とか「A社に仁義は切ったの?」とか言ってるのは本当に滑稽。
他にも何か思いついたら追記します。