The Midnight Seminar

読書感想や雑記です。近い内容の記事を他のWeb媒体や雑誌で書いてる場合があります。このブログは単なるメモなので内容に責任は持ちません。

日本人はスケーラブルなアーキテクチャを作るのが苦手(伊藤穣一)

2年前のものなので古いですが、↓の動画をみまして、伊藤穣一氏が言っていることを何点かメモしました(発言そのままではなく要約です)。
IT業界のことはよく分かりませんが、日本人は個々には良い物をつくっているのに、全体としてしっかりとしたアーキテクチャを構築してスケーラブルな仕組みを作るのが苦手だとか、それをやるためにはけっこう(職人気質ではダメで)政治的な駆け引きも大事なんだとかいう話は、ITに限らずなんでも当てはまる話のような気がします。
政治の世界でもつねにルールメイキングで負けているというか。
伊藤氏は他のインタビューでも、日本はニコニコ動画とかをはじめとしてUGCのレベルが異常に高いのだが、スケーラブルなアーキテクチャを作ってそういう能力を世界に広めるようなことは全然できてない、みたいなことを言ってたような。



GDD 2011 Japan: VC パネル: 起業家精神、起業支援とベンチ ...

  • いまはMITにいるので、東海岸が強そうなところに投資している。オープンハードウェアとか、データサイエンスとか。西海岸・シリコンバレーのベンチャーキャピタリストは、ソフトウェアのような効率のいい分野には投資するのだが、いくつかやらないことがあって、たとえばハードウェアはやらないし、大企業と組まないといけない案件はやらない。東海岸は、巨大なデータをもった国の機関とか電話会社とかがあるので、たとえばビッグデータの分析とかをやったりするのだが、西海岸の連中はそういうのはめんどくさがってやらない。あと、西海岸の連中は、あまり標準化をしない。MITには、TCP/IPなどインターネットの基本的なアーキテクチャを作ってきた技術者たちもいるし、そういうインフラレベルの仕事は大学という場が向いてるとも思う。西海岸は、オープンスタンダードをはしっかり利用するが、自分の作るモノはぜんぜん標準化しようとしない。
  • ブログが生まれたとき、伊藤が「これからブログが流行る」と言ったら「いやいや日本にはもともとインターネット上での日記の文化があるんだから今さら何を言ってるんだ」と反論された。しかしブログは、RSSとかも含めて、オープンスタンダードを作り上げたことが重要。GoogleやYahoo!も、ブロガーたちを交えて協力しながらブログというアーキテクチャを協力して作り上げていった。日本が「日記」という文化を先に持っていたのは分かるんだけど、日本人は、それをしっかりアーキテクチャにしてスケーラブルにするというところが弱い
  • レッシングの『CODE』をよむと、自分にエンジニアが泣きついてきて「政治的なことはやりたくない」と言うことがあるらしい。しかし、エコシステム全体のなかで自分のつくっているものがどういう役割を果たすのとか、どこと組むべきなのかとかを考えて、政治的な努力をしないと良い物にはならない。AppleGoogleFacebookもすごく政治的にいろんな組み方をしている。
  • 最近は面白い会社がシリコンバレーではなくサンフランシスコに増えているが、なぜかというと、製品・サービスづくりも、レイヤーが上がっていくと「技術」と「文化」の融合が大事になるのだが、シリコンバレーには文化がない。エンジニアリングはあるが、文化はないので、デザイナーたちもあまりシリコンバレーには住みたがらない。サンフランシスコやボストンやニューヨークのほうが文化はあるので、高いレイヤーの仕事をやろうと思うと、そういう都市に良い会社ができるのでは。
  • 失敗したことがない人にはぜったい投資しない。なぜなら、その人も必ずこれから失敗はするのだが、そのときにどうして良いか分からなくなって爆発するから。人間、最初の何回かの失敗は、頭が真っ白になって爆発するもので、たとえば電話に出なくなって逃げたりするもの。そういう経験を早く積むと、度胸がついて勘もできてくるので失敗しても大丈夫になる。だから、何度か失敗したことがある人にしか投資できない。また、会社がつぶれたときにはいつも、そこから何人か使える人を引き抜いてどこかへ紹介したりする。失敗したときに一番、人間性とか経営能力が分かるので。会社がつぶれそうなときに、逃げなかったかとか、責任をきちんととれる人間かとか。
  • 日本も、UIとかデザインとかそういうのは得意だが、デザインとエンジニアリングが分かれてしまっているので良くない。
  • メディアラボは、議論することや論文を書くことではなくとにかくモノを作ることを重視している。方針として、「anti-disciplinary」を掲げている。
  • ソフトウェアの特許はなくすべき。薬品のように投資資金が大きい分野では、その回収のために特許による独占が必要だが、投資資金が少なくてすむような分野では特許という仕組みは無くした方が良い。