
- 作者: T.ヴェブレン,Thorstein Veblen,小原敬士
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1996/03
- メディア: 単行本
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やばい、ヴェブレンの『(営利)企業の理論』面白すぎる。『有閑階級の理論』なんかよりはるかに面白い。
「金銭的利得」目的として行動する「営利企業」が、「信用」に基づく「取引」の複雑なネットワークを形成し、そのネットワークが「機械過程」として市場全面を覆うまでに発展した。
そして、「財貨の生産性の向上」ではなく「利潤の増大」が、「産業的な目的」ではなく「企業的な目的」が、「社会全体の経済福祉」ではなく「企業者の金銭的利害」が優位になった。
これにより資本主義は、「偶然」により資産価値の異常な高騰――つまりバブル――を引き起こし、その後に「必然」として「恐慌」が訪れるという不安定な、社会心理学的現象としての「景気変動」を、それ自身の内在的なメカニズムとして抱えることになってしまった。
ヴェブレンはこの本を、主に19世紀の景気変動から教訓を得て1904年に書いている。しかしその後の大恐慌はもちろん、最近のITバブルやサブプライム問題のことまで言い当てているような、痛快な思想書である。
この本からはいろんな教訓を得ることができそうだ。
たとえば市場原理主義を批判するときに、「弱肉強食で格差を拡大する」とかいうのはたしかに一つの論拠になるけど、つまらん。また、ひたすらなる利潤の追求を「道徳的に卑しい」といって非難するのも、やはりつまらん。
それよりもヴェブレンのように、株主資本主義や金融資本主義みたいな、市場原理主義に陥った経済が、「産業」(つまり実体経済)そのものを撹乱して「社会全体の経済福祉」を低下させるという理屈に注目するほうが良い。つまり資本主義の市場経済というのは、その論理を純粋に貫徹しようとすればするほど、我々を幸せ〜な感じの均衡点へと導いてくれるというよりも、非常に不安定で非効率な危機的状況へに陥れてくれちゃうんだというロジックである。(あくまで、そういう場合ってあるよね的な話なので、市場原理主義批判原理主義に陥ってはいかんけど。)
↓に素晴らしい要約が載っていましたが、暇があるときにあとで自分で要約メモつくります。
http://note.masm.jp/%B4%EB%B6%C8%A4%CE%CD%FD%CF%C0/