映画の思想的、政治的、歴史的、美学的なメッセージがどうのこうのと言う以前に、そもそもテクニカルな次元の話として、漫画的に――いや漫画未満の――いい加減な作りの作品であった。特に脚本が支離滅裂で、プロの仕事としては完全に失格レベルなのではないか。BGMと映像もぜんぜん合ってない。
論じるに値しないから簡単な感想だけ述べておくと、要するに、保守論壇が繰り返してきたステレオタイプトな特攻賛美――ほとんどの場合、事実上の“冒涜”にほかならないが――、あの直線的にマンネリ化した右翼的な感情論の数々を、思いつくまま無造作に並べ立ててみただけの、言ってみれば『諸君!』や『正論』の目次みたいな脚本なのだ。
石原慎太郎の胸中に、特攻に関して言いたいことがたくさんあったのは分かる。しかし、いくら老い先短いからと言って、焦ってそれらをムリヤリ一本の脚本のなかに詰め込み、支離滅裂な映画を作って何か意味はあるのだろうか。
映画館の入り口で、試写会か何かを見た人たちの感想文が掲載されたチラシを配布していたが、その3番目あたりに「CGがすごかったです。リアルで迫力がありました。(27歳男性)」とかいう感想があった。これにはさすがに失笑せざるを得なかった。特攻映画でCGに感動してどうするww
所詮その程度の映画なのであって、特攻の美しさについて考える切っ掛けにもならない。