『表象』という、単行本扱いだが雑誌みたいな本が創刊されていて、浅田彰と松浦寿耀という東大教授の対談を読むために買ってみた。
「ともかく、アメリカ的な合理化に耐える人文知が実は重要だと思うので、アメリカ的なプラグマティズムだけが全面化すると人文知が成立する余地は失われるんだけれども、それへの反動としてヨーロッパ的(あるいは東洋的)な古き良き教養に戻るというのも望ましくもなければ可能でもない。亡命知識人の体現するヨーロッパとアメリカの臨界に二〇世紀の人文知の最大の可能性があった、また、別のところでもそのような臨界における移動と翻訳に人文知の可能性があった。それを二一世紀にどうやって取り戻せるかというのが、ひとつのモチーフになるかなとは思いますね。」(14頁, 浅田)
「ともあれ、総じて、幼児的退行を売り物にするアートばかりが、日本から世界に輸出されている。率直に言って、僕はそういうものは最悪だと思います。」(23頁, 浅田)
「 (M.マクルーハンは)近代的都市からグローバル・ヴィレッジへと、進むというか、退行するというか、そういう未来を予言したわけです。その予言は半分は当たった。ただし、それは実際には、グローバル・ヴィレッジではなく、地理的のみならずジャンル的にもローカルなヴィレッジズに分化していった。近代的な主体が都市的な状況の中でコミュニケートするというより、ある意味で前近代的・幼児的な主体が、閉じられた小さな村のなかで濃密な情報空間を共有するというところへ戻ってしまった感じがする。」(27頁, 浅田)
表象〈01〉特集 人文知の現在と未来―越境するヒューマニティーズ
- 作者: 表象文化論学会
- 出版社/メーカー: 表象文化論学会
- 発売日: 2007/04/30
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 29回
- この商品を含むブログ (16件) を見る