The Midnight Seminar

読書感想や雑記です。このブログの裏で始めた統計&プログラミングのブログのほうがアクセスが伸びてしまい、こっちが裏みたいになってます。

慰安婦問題は歴史のテーマとしては“マニアック”

そもそも重要な問題なんだろうか

 従軍慰安婦問題について、なんか朝日新聞が「誤報」を認めたとのことで盛り上がってましたが、個人的にはもうあまり興味がもてないですね。*1
 十年以上前になりますが、まだ私が19〜20歳ぐらいだった頃にいわゆる「歴史認識問題」が盛り上がっていて、そういう本をたくさん読みました。その頃は「マスメディアと教育によって『自虐史観』を刷り込まれてたらしい」とか思って腹が立ったりもしましたね。
 しかし1年半ぐらいそういうのを読んでると飽きてきたというか、保守系のメディアで言われてることもなんか単純すぎるような気がしてきて、「怒ったりする前にいろいろ幅広く勉強したほうがいいわ」という感じになり、論争的なものは読まなくなりました。また、9.11とかイラク戦争とかがあって、「ウヨ vs サヨとかやってる場合ちゃうやん」という感じになってきたってのもあります。


 で、今年久しぶりに慰安婦問題が盛り上がっているのを見て、まあ私も昔、読者として盛り上がってたので気持ちは分かるのですが、すでに興味が冷めているのに加えて、「そもそも慰安婦問題って、そんな重要な問題か?」っていう疑問が大きすぎて、細かい事実関係の情報とかを読む気がしないですね。
 昔、「新しい歴史教科書をつくる会」が元気に活動してた頃、藤岡信勝という学者が「朝まで生テレビ」で、次のような趣旨のことを言ってました。

 私は、従軍慰安婦問題というのは、確かに議論してもいいとは思うんですが、大東亜戦争の歴史全体から見れば小さな問題であって、中学校や高校の歴史の授業で教えるほどのものではないだろうと思います。
 歴史学にはいろいろ面白いテーマがある。たとえば日本の中世のトイレについて調べた研究とかがあって、個人的にとても面白いと思うのだが、そんなマニアックな話は大学で歴史を専門とする人が勉強したり研究したりすればいい。
 従軍慰安婦問題というのも本来はそういう種類のテーマであって、大学で専門家が大いに議論したらいいと思うが、中高の教科書に載せる必要はないでしょう。


 ・・・という話をしたところ、左派の人から「藤岡は慰安婦を便所みたいなもんだと言っている。女性の人権を何だと思っているのか」と怒られたことがある。そういう意味でいってるんじゃないだけど。


 私がおおよその意味を思い出して書いてるだけなので、実際のセリフはこの通りではないのですが、結局、こういう感覚が正常だと私は思うので、国民的レベルで議論するようなことではない気がしますね。

慰安婦問題のイメージ

 もう細かいことは忘れたのですが、たしか昔いろいろ読んだ感じだと、従軍慰安婦問題が最初に話題になったときは、「日本軍が朝鮮人女性を誘拐してきてむりやり軍人相手の売春に従事させていた」みたいなイメージで語られていたんだったと思います。それだと確かに、日本軍というのは世界的にも稀なレベルの犯罪集団だったと言われてもしかたないのかも知れませんね。
 ところが、いろいろ事実関係を検証していくとそんなことはないことが分かって、むしろ民間の事業者が慰安婦を募集して、軍人相手に商売をして儲けていただけであると。日本軍はそれを公認していて、とくに性病とかの危険があるので衛生管理はしっかりしなきゃということで、けっこう積極的に管理・監督を行っていた。そして日本軍の慰安所は、他の国の軍隊の慰安所と比較したときに、特別悪いものでもなく、むしろ規律はしっかりしている方であったのだと。
 それでも、


サヨク「いやいや、やはり軍・政府がそれを公認していたのだから、そこには広義の強制性があると言うことができて……」
ウヨク「広義の強制性って何だよ!」


 というような論争が続いていて、なんかそれ以上は読む気がしなかったので細かいことは知らないんですが、今に至るまで「日本軍は悪いことをした」派と「悪いことはしてない」派に分かれて言い争っていたようです。


 言い争うのはべつに良いんですが、少なくとも何万人も強制連行して性奴隷として虐待したみたいな事実は全く発見されていないらしいので、まずは藤岡が言うように「そもそも大して重要なトピックではない」と認識することが大事なんじゃないでしょうか。*2
 日本軍が正式な方針として、女の子をどっかから誘拐してきて軍人の性欲のはけ口として奴隷のように働かせていたとなると、日本軍ってのは他国の軍隊にくらべて酷い集団だったなぁということになって、けっこうな問題ではあります。しかしそうではないのであれば、「女性の人権ガー」という観点からいろいろ怒るのは良いと思いますが、多くの人にとっては「マニアックな話題」になるはずです。


 イメージとしていうと、まず戦争ってのは「悪」であるとしましょう。戦争が人類に良いものをもたらす面もあると思いますが、めんどうなので100%悪だとしておきます。人がたくさん死にますし。
 ↓のような図を描いて、これが問題の全体像だとします。


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 んで、私は第二次世界大戦にいたった歴史の全体的な文脈を考えると、戦争の「悪」ってものは、誰のせいでもないような面がけっこうあると思っています。帝国主義的な侵略の歴史とか、グローバル化による世界の不安定化とか、日本やドイツなどの新興国の台頭とか、金融危機とか、なんかいろいろ「歴史の流れ」みたいなものがあって、誰かが悪いっていうより運命みたいなもんなんじゃない?って思っちゃう面があるわけです。
 それが適当に、↓このぐらいの割合だとしておきましょう。適当です。


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 そして、日本が行った戦争にしても、日本が全面的に悪いということはないわけです。まぁ日本は後発の国で、ちょうど世界史的には戦争の非合法化が進められていく転換点あたりのタイミングで張り切って大陸に進出しすぎたのがまずかったよね、みたいな面はあるかも知れません。もちろん、日本が併合したり進駐したりした国の側からみれば、「おいおい西洋人に加えて日本人まで我々の国を荒らしに来たのかよ」って思う面はあるでしょう。
 しかし西洋列強がかけて来るプレッシャーもハンパなかったわけで、対米戦争にしても、オレンジ計画・ABCD包囲網・甲案乙案・ハルノートといった流れをみれば、まぁお互い様という感じか、むしろ日本は自衛のために頑張ったのだと言える面はかなりあると思います。
 なので、適当に、日本の悪を少し小さめにしておきましょう。適当です。


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 それでですよ、慰安婦問題について考えたいんですが、仮に当初言われていた「誘拐してきて〜」というのが事実だった場合、たしかに重要な問題ですが、戦争の歴史全体からみればまぁごく一部なので、↓こういう感じだと思います。


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 これでも面積大きすぎると思いますが。
 で、ここでたとえば仮の話として、「慰安婦問題はあくまで象徴的な一つの出来事であって、日本軍というのはその他にもたくさんの悪事をはたらいていたのだ」ということにすると、もう少し大きくなると思います。「日本軍は西洋列強にくらべて、極端に残虐な、犯罪者集団であった」ということになるんで。
 その場合、「日本の悪」の面積も増えて、↓こういう感じになります。


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 しかしいろいろ事実関係を調べたところ(私は調べてませんが)、日本軍はべつに、特別に残虐な集団だったというわけではないようです。
 そもそも慰安所も、単に民間の売春業を公認して兵隊に使わせていた程度の話で、しかも衛生管理や慰安婦への支払なども純粋な民間の売春業者に比べてしっかりしていた。
 であれば、↓こうでしょう。


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 もう、小さくてみえないですよね。
 しかもですよ、べつに日本だけじゃなくて他の国の軍隊にも慰安所みたいなものはあったらしいので(公式にはない軍隊もけっこうあったらしいですが、現地の売春宿に入ってたら似たようなものですね)、正確には↓こうですね。


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 さらに冷静に考えると、「日本軍が朝鮮人の女の子を誘拐して〜」みたいなことがなかったのであれば、そもそも慰安所って「悪」なのかどうかについてすら、意見が分かれてくると思います。
 「兵士向けの売春施設」について、いろいろ意見はあり得ると思います。しかしこれはもはや、明らかな戦争犯罪(非戦闘員の大量虐殺とか)のように「誰が聞いても怒る問題」ではなくなっているし、価値観によって意見が分かれ、なかなか収拾はつかないでしょう。
 イメージとしては、↓こんな感じです。


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 Q2のような状況で、あまり感情的に叩きあっても意味ないでしょう。そもそも簡単には答えが出ない問題なので。
 しかも、Q1とQ2では問題の大きさが全然違うわけです。


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 要は慰安婦問題ってのは、「日本軍が朝鮮人の女の子を誘拐しまくって〜」という話じゃなくなった以上、もはや「小さくて、しかも考え方は人それぞれとしか言いようがない問題」なわけですね。
 朝日新聞の「誤報」を叩くのはまぁいいですが(といっても、この記事に書かれているように、そもそも朝日新聞にそんな影響力あったのかよっていう面もありますが)、左派が「広義の強制性が〜」とか言うのは、べつに良いんですよ。そういう考え方もあり得るので。その考え方を保守派がいちいち批判してもしかたなくて(しても別に良いのだが)、「そもそも問題自体がマニアック」という認識が大事なんじゃないかという気がしました。


 たとえばですが、↓のような記事を見ました。
 池田センセイ、永井和はウェブサイトに「そんなこと」を書いていますよ! - 永井和の日記 - 従軍慰安婦問題を論じる
 この人が自分の「ウェブサイト」から引用したという箇所は*3、まったくロジックが理解できませんが、慰安所というシステムの「広義の強制性」に怒る人がいるのは別にいいし、「女性の人権ガー」と論じるのもいいと思います。しかしそれって、たとえば「戦時中は暴力団対策法が存在せず、ヤクザ組織が野放しだった。日本政府の怠慢だ」とか「70年代ぐらいまでクルマのシートベルト着用が義務づけられていなかったのも、政府の怠慢だ」とか怒るのと同じレベルでマニアックな怒りですよねと。
 べつに人の意見や関心は色々だからいいけど、普通はそんなとこでキレる暇があったらもっと別のことにキレるわという話じゃないですかね。たとえば、慰安所の強制性を問題視するなら、赤紙での召集に対してはその100万倍ぐらい怒らなくて良いのかよって思いますね*4。強制的に南の島とかに連れて行かれて死ぬわけなので。

*1:といいつつブログエントリを書いてるのだから、少しは興味あるのかも知れません。

*2:韓国の運動家の反日キャンペーンが〜」という問題はあるかも知れませんが、それに対処する上でも、事実関係を正確に踏まえたあとは、「他に重要な問題がたくさんある」という態度を貫くのが大事だと思う。

*3:リンクも貼ってあるが飛んでも何も表示されない。

*4:私は別に怒りませんが。